日本食はタブーだらけ?ベジタリアンやヴィーガン、宗教別の食文化を徹底解説!
世界を見ると、宗教や信念などから食事に関する制限がある人は想像以上にたくさんいます。
今回はベジタリアンやヴィーガン、ハラルなど「食」に関するそれぞれの考え方や特徴、そしてこれらの方達と接する際に自身の経験談も含めて気をつけるべきことをご紹介したいと思います。
ベジタリアン
ベジタリアン(vegetarian)は菜食主義である人を表す言葉ですが、その名の通り動物性食品を食べない人たちです。
日本ではまだあまり浸透していませんが、インドでは人口の約3割(約4億人)がベジタリアンと言われていますし、アメリカやヨーロッパでも、動物愛護や環境問題など社会的な理由からベジタリアン人口が急増しています。
ベジタリアンの種類
厳密にはベジタリアンの中でもいろんなパターンがあり、制限の範囲が異なります。
それぞれの特徴を見てみましょう。
ラクト・ベジタリアン(Lacto-Vegetarian)
Lactoは「乳の」というラテン語由来の言葉です。つまり、牛乳やチーズ、バター、ヨーグルトなどの乳製品は食べるベジタリアンです。
オボ・ベジタリアン(Ovo-Vegetarian)
Ovoもラテン語由来の言葉で「卵」という意味です。卵は食べるベジタリアンですね。
ラクト・オボ・ベジタリアン(Lacto-Ovo-Vegetarian)
肉や魚は食べませんが、乳製品と卵は食べるベジタリアンです。
ベジタリアンと聞くと、恐らくこのタイプをイメージを持つ方が多いかと思います。
ヴィーガン(Vegan)
最近はヴィーガンという言葉を聞いたことがある人も多いと思います。
ベジタリアンの中でも制限が厳しく、肉や魚介類はもちろん、上記で出てきた乳製品や卵の他、蜂蜜など、動物が関わる食物は全て食べません。
また目には見えなくてもチキンエキス、鰹出汁など動物由来の調味料や、豚の皮などから作られているゼラチンもNGです。(一部のベジタリアンの場合も同様です。)
さらに、ヴィーガンは動物愛護の観点から、革製品やシルクなど動物由来の製品を身につけることをしない、動物実験に反対する人も多くいます。
フルータリアン(Fruitarian)
ヴィーガンのさらに上をいくフルータリアンは植物性食品のなかでも、植物を殺さない(絶やさない)ものだけを食べます。
例えば林檎やバナナなどの木から成るフルーツやナッツ、つるから成るきゅうりやトマトの野菜やフルーツなど、大元の植物が死なない(絶えない)植物は食べますが、人参やジャガイモなど収穫してしまうと植物が残らないものは食べません。
ベジタリアンの背景
ベジタリアンである理由は様々あります。健康やダイエットのための人もいれば、動物愛護の観点や、家畜を飼育するために森林を伐採したり、大量の水などの資源が使われたりする環境問題の観点、将来的に食糧難が予測される中、家畜が大量の穀物を消費しているなどの食料問題などです。
今回の新型コロナウイルスが中国の野生動物市場が発生源という報道もあり、「ノンベジタリアン(Non-Vegetarian)だから起きたこと」「だから動物は食べるべきではない」といったベジタリアンの意見も多いようです。
一方で、肉や魚にから得られる人間にとって必要な栄養が得られない、ベジタリアンである親の子供や極端な食事制限をしているベジタリアンが栄養失調になる、など問題もあるようです。
ハラル (イスラム教)
「ハラル」はイスラム法で「許可された」という意味で「ハラル料理」はイスラム教徒でも食べられるものを指します。
イスラム教は「豚」と「アルコール」がNGなのは知っている方が多いと思いますが、単に豚肉料理とビールなどのお酒を避ければいうことではありません。
豚肉そのものでなくても、こちらの場合もポークエキスなどの豚由来の調味料、ゼラチンもダメですし、豚肉以外でもイスラム法に則った屠殺や処理がされていない肉は食べられません。
例えば「血液」を口にすることもNGですので、血抜きされていないステーキや魚料理もダメということになります。
アルコールはドリンクだけでなく料理酒やみりんもNGです。
日本料理は料理酒やみりんが使われた料理が多いですし、豚由来のエキスが入った風味付けもよくあります。
しかし、日本へ来たイスラム教徒の人たちは料理に何が含まれているかはわからないですし、豚以外の肉もきちんとイスラム教徒でも食べられる処理がされているかは見た目では判断がつきません。
最近では、イスラム教徒の人でも安心して食事ができるよう、ハラル料理であることを証明する「ハラル認証マーク」をつける店も増えてきています。
コーシャミール (ユダヤ教)
ユダヤ教が食べても良い生き物を「コーシャ」と呼び、ユダヤ教の規定に基づき適切に処理された食べ物を「コーシャミール」と呼びます。
肉であれば「ひづめが割れていて反芻する4足歩行の動物 (牛、羊、やぎなど)」でなければ食べられない規則、魚類であれば「ヒレと鱗があるもの」しか食べられない規則があります。
また、ユダヤ教でも「血液」がダメですし、聖書の「子やぎをその母の乳で煮てはならない」という内容から肉と乳製品を一緒に食べることも禁止されています。胃の中で肉と乳製品が一緒になってはいけないという解釈なので、シチューのように一つの料理に肉と乳製品が入っているのがダメなのはもちろん、料理は別々でも同じ献立であることや、時間を空けずにそれぞれを食べることもNGのようです。
ヒンドゥー教
ヒンドゥー教の人は牛は聖なる動物ですので牛を食べません。しかし、水牛は崇拝の対象外のため屠殺は禁止されておらず、ノンベジタリアンが食したり、牛革として使用されるようです。
また、豚も不浄のイメージから好んで食べる人はほとんどいないようです。
私たちが気をつけるべきこと
寿司やすき焼きなどの日本料理や鰹出汁や豚骨スープなどの味付け、みりんや酒を使った調理方法など、日本人にとっては切り離せない食文化が根強くあります。
だからこそ、彼らの食文化を正しく理解し、尊重する必要があると感じます。
特に「正しく理解する」重要性は自身の実体験によって強く感じています。
目に見えるタブー食材は避けることができても、先程も述べた通り、動物由来のエキスや出汁、みりんや酒などの調味料、ゼラチンなどは見逃しがちですので、注意が必要です。
私も過去にベジタリアンとヴィーガンの違いを知らず、ヴィーガンの人と食事に行った際に玉子焼を食べてみなよ!と言ってしまったり、お家でお好み焼きを振舞ってしまったり(豚玉やイカ玉にしなければ大丈夫と思いましたが、お好み焼き粉に鰹出汁などが入っているのでNGです。)、無知や知った気で数々の失礼をしてしまいました。
それからは、海外の方と食事をする機会があれば、事前に食べられない(制限のある)ものがあるかを尋ねるのは一種のマナーだと感じています。
またベジタリアンでも様々なタイプかいますし、宗教も細かい規定があったりしますので、コミュニケーションも兼ねて彼らの文化について会話できると尚良いですね。(宗教はナイーブな話題ですので聞き方などにも注意が必要です。)
まとめ
日本では圧倒的に無宗教である人口と、ノンベジタリアンである人口が多く、まだまだ多様な食文化に対する理解が浸透していない印象です。
いろんな国の料理を食べられることが食文化の多様性と感じている人も多くいますが、今回ご紹介したような宗教やベジタリアンの理由から「食べられない」ことも食文化の多様性です。
この記事が、皆様の何かの参考になったり、食文化に興味を持ったり理解するキッカケになれば幸いです。